真紅の棚・1

吸血鬼関係の棚の1です。
解説書と小説類のページ。ライトノベルやマンガは棚の2へどうぞ。

・解説書

吸血鬼の事典/マシュー・バンソン

吸血鬼の事典 たまに適当にぱらっと開いた所を読むだけでも楽しいです。
ちゃんと項目があいうえお順になっていて、並べ替えるの大変だったろうなーと変な所で感心。

吸血鬼関係の単語から、吸血鬼ものの小説の作者・タイトル・登場人物、吸血鬼ものの映画、関連する地名、それに吸血鬼防御法や予防法、退治法・発見法、吸血鬼になる原因など色々載っています。
これ一冊あればこのページを見る必要はないです(笑)


ドラキュラ伯爵 ルーマニアにおける正しい史伝/ニコラエ・ストイチェスク

ドラキュラ伯爵―ルーマニアにおける正しい史伝これは吸血鬼とは関係ないのですが、ブラム・ストーカーの「ドラキュラ」のモデルとなったヴラッド・ツェペシュに関する本です。
ヴラッド(ヴラド)の統治と戦い、歴史書や物語に書かれる彼の扱いについてなど。
残忍な面を強調されて伝えられる彼はルーマニアでは英雄とされるような君主であり、串刺しその他の残虐な処刑法は彼だけではなく、当時一般的に使われたものであることなどが書かれています。
少し文章は読みにくい部分もあります。
私が読んだのは改版された「中公文庫BIBLIO」(画像のもの)ではなくその前の「中公文庫」なのですが、どの程度内容が違うのかは改版されたものを読んでいないので不明です。


ドラキュラ学入門/吉田 八岑・遠藤 紀勝† new

二部に分かれていて、第一部は吉田八岑による「吸血鬼の悪魔学」、第二部は遠藤紀勝による「吸血鬼の民俗学」。
資料写真と絵がわりと多いです。ブラン城の写真やミイラの写真などもあります。
吸血鬼ものの映画や小説にも触れられていて、広く浅い、まさに入門書な感じの本です。


・小説

シャーロック・ホームズ対ドラキュラ あるいは血まみれ伯爵の冒険/ローレン・D・エスルマン† new

シャーロック・ホームズ対ドラキュラ 「吸血鬼ドラキュラ」の物語の裏で、実はシャーロック・ホームズ&ワトスンと、ドラキュラ伯爵との戦いがあったのだ! ……という、シャーロック・ホームズのパロディ(パスティーシュというのですね)。
シャーロック・ホームズのパロディであり、吸血鬼ドラキュラのパロディでもある作品。
「吸血鬼ドラキュラ」の話の筋を頭に入れて読むと面白いかもしれません。
これはワトスン博士の手記が発見された、ということでワトスンが書いたことになっています。
「吸血鬼ドラキュラ」と違う部分はブラム・ストーカーによる捏造と主張、話の中でもヴァン・ヘルシング達とホームズ達は共闘しておらず、別行動をとっています。
わりと薄い本ですし、訳者あとがきも興味深いので一読の価値有り。


ミッドナイト・ブルー/ナンシー・A・コリンズ

ミッドナイト・ブルー  ミッドナイト・ブルー
 ゴースト・トラップ
 フォーリング・エンジェル
 ブラック・ローズ

モーガンという吸血鬼に襲われ、車から道端に捨てられた少女は、死の淵をさまよった末に吸血鬼となった。
通常の吸血鬼と違い、銀のナイフを手に吸血鬼を狩るソーニャ・ブルー。
人間だった頃の少女の意識と、現在のソーニャ、そして残酷な吸血鬼の意志とが同居する彼女が、己を吸血鬼にしたモーガンを殺すためにその行方を追う。
街には人間に偽装した悪魔や化け物、それに天使が人間には気付かれないまま存在している、そんな世界で彼女に関わる人間や吸血鬼達が描かれます。

三部作で完結し、「ブラック・ローズ」はその後の外伝です。


きみの血を/シオドア・スタージョン † new

きみの血を 「これって確か吸血鬼ものってことで以前チェックしてそのうち読む本リスト(というメモを携帯に入れてます)に加えていたんだよね? 吸血鬼関係なくて別の理由で面白そうだから読むつもりだった?」と自問したくなるくらい、全体の三分の二位までは吸血鬼ものの片鱗ものぞかせない。
陸軍の精神科医と陸軍大佐との電報を含む往復書簡と、診断の対象者である「ジョージ」(本名は別)に書かせたジョージの半生記のような手記、そしてそれを書かせた後の患者とドクターとのやりとりの記録等、全てそういった書類の情報で進みます。
「ジョージ」が手記の中では書かなかった(ゆえに手記の内容はそれほどおかしくない)肝心な部分が後半ドクターの努力により暴かれていく。
サイコサスペンスあるいはミステリ的な感じで、これはなかなかヴァンパイアものとしては異色の作品ですね。
結構面白いです。はい。


吸血鬼ドラキュラ/ブラム・ストーカー

吸血鬼ドラキュラ 基本です。
それ以上何を書けと。

ヴラド・ツェペシュが吸血鬼だったとしたブラム・ストーカーのこの小説の原題は当初「The Un-Dead」だったそうです(@吸血鬼の事典)。出版直前に変わったようです。


ヴァンパイア・ジャンクション/S.P. ソムトウ

ヴァンパイア・ジャンクション ロッカーな少年ヴァンパイアが登場します。
ロックシンガーなヴァンパイアとしてはレスタトより先に書かれました(日本での出版は後でしたが)。
ヴァンパイアになっていないままの人間が彼の世話をしています。
すみません、本が埋もれて出て来ないどこにあるか判らないのでこれ以上の解説は保留……。


トゥルーブラッド/シャーレイン・ハリス

トゥルーブラッド  トゥルーブラッド1 闇夜の訪問者
 トゥルーブラッド2 歪んだ儀式
 トゥルーブラッド3 囚われの想い人
 トゥルーブラッド4 奪われた記憶
 トゥルーブラッド5 暗闇の狙撃手
 トゥルーブラッド6 女王との謁見
 トゥルーブラッド7 交差する謀略
 トゥルーブラッド8 秘密の血統
 トゥルーブラッド9 去り行く者たち
 トゥルーブラッド10 絆の力
トゥルーブラッド11 遺された秘宝
トゥルーブラッド12 愛情の行方
トゥルーブラッド13 安らぎの場所

これは以前シリーズの1作目のみ集英社文庫から「満月と血とキスと」というタイトルで出版されていたものがソフトバンク文庫から改めて出たものです(訳者も違います)。
知らないうちに2巻まで出ていて、3巻が出た後に一気買いしました。

最初にこのページに載せていた「満月と血とキスと」へのコメントは以下の通り。

他人の考えが読める主人公の女の子とヴァンパイアの恋人の話ですが、どうやらこれシリーズ物らしいですね。まだ一冊目しか邦訳は出ていないようですが。
純然たるホラーでは、ないです。
ホラーというかヴァンパイアの出てくるミステリーの要素がちょっぴり、そしてラブロマンスの要素が八割がたを占めてるような印象。
ヴァンパイアの他にも「変身人間」(動物に変身する)なんかもいますけど。
恋人になるヴァンパイアのビルにしても、ちょっと微妙です。
エリックというビルよりも古くて(年を重ねていて)、そのために力も勝っているヴァンパイアの方がいかにもヴァンパイアらしくて魅力的かと思います。
でもやっぱり、続きが発売されたら読むんでしょうね、私は。
ホラーや吸血鬼好きの人向けというよりは、ちょっと不思議で甘々なラブロマンスが好きな人向けの本ですね。

このシリーズの世界ではヴァンパイアは市民権を得ており、(それでも人間との間の純然たる壁は存在する)主に人工血液を飲み、人間の社会に入っています(2巻で人工血液を開発したのが日本人だと書かれたくだりは読んで笑いました)。
「トゥルーブラッド」(ちなみにトゥルーブラッドというのは人工血液の商品名)として再度出たものを読むと、1巻では一応人間の世界での事件が中心となっていましたが、今は変身人間や狼人間といったスーパーナチュラルの社会での事件が主となってきています。
テレパスである主人公のスーキーと1巻で恋人になったビルとの関係は揺らぎ出し、人間の男からはあまり相手にされない主人公は人間以外の男にはもてまくる。そして普通の人間なら死ぬような目に何度も遭いまくります。普通なら確実に何度か死んでますよ。
画像はエリック表紙の7巻をチョイス。だって「満月と血とキスと」のコメント読めばわかる通り最初からエリックが好みだったし(笑)
あ、1巻ほど甘々ではありません。どんどん殺伐としていきます。
話を進めながら物語世界の設定を構築しているような感がなきにしもあらずですが、しばらくは読んでいこうと思っています。

−追記−
13巻で完結しました。
なんかもう本当にね、やっぱり最初話の方向考えてなかったでしょ、考えながら行き当たりばったりにここまで続けてきたんでしょと言いたい。
クイン(虎人間)みたいな途中で寄り道ならともかくヴァンパイアもののシリーズで最後にくっつく相手がヴァンパイアじゃないとか読者に喧嘩を売っているとしか(-_-メ)
1巻(もしくは「満月と血とキスと」)で読むのやめておけば幸せだったのか、いやそれだとエリックともくっつかないしとか考えてしまう近頃の私なのでした。
ドラマシリーズまで手を出さずにいて良かったです。はい。


ロスト・ソウルズ/ポピー・Z・ブライト

以前映画化されたものとはタイトル同じですが別物。
「気持ち悪いから読んでみて」と言われて読んだものです。
吸血鬼もの。……気持ち悪かった。
それは、血だの肉だのが気持ち悪いのではないのです(それが気持ち悪い人もいるにはいるでしょうが)。
「お前ら全員風呂に入れー!」という気持ち悪さなのです。
出てくるヴァンパイア達がとにかく汚い。車の中で吐いたら掃除しろー!
でも面白いのです。訳はヴァンパイア・クロニクル(1冊め除く)と同じ柿沼瑛子。


真紅の呪縛/トム・ホランド

真紅の呪縛  真紅の呪縛
 渇きの女王

詩人のバイロンは吸血鬼であったのだ、という話(略し過ぎです)。
バイロンだけでなく他にも実在した作家が作中に登場します。
ゴシックで重厚な吸血鬼小説です。
ミイラのように干からびてなお血を吸おうとしない愛する女性を美しく甦らせようとするバイロンや、彼とポリドリの軋轢などが語られます。

一度読んだだけで貸したまま戻って来ないので内容かなりうろ覚えですが、面白かったですよ。
いまいちだったら一冊目でやめていた筈ですから。


トワイライト/ステファニー・メイヤー

トワイライト  トワイライトI Twilight 上
 トワイライトII New moon 上下
 トワイライトIII Eclipse 上下
 トワイライトIV Breaking dawn 上下・最終章
 トワイライト 哀しき新生者

単行本で全13巻、文庫だと9冊。
これもまだ単行本しか出ていない時からずっとアマゾンでお勧めに入っていた本なのですが、軽そうなのでどうだろうと思って読んでいなかったのですね。文庫版の表紙は落ち着いたものですが、単行本の表紙は中の挿絵と同じくイラストなので。
そしてそれが映画化。
映画の1作目「トワイライト〜初恋〜」を見てから原作を読み始めました。
「トゥルーブラッド」とは逆に、人の考えの読める吸血鬼・エドワードと、彼が唯一読み取れない人間の少女ベラとの恋模様から始まり、ベラに恋する人狼のジェイコブやエドワードの「家族」、そしてエドワードの一族以外の吸血鬼などが絡み合って話が進みます。
考えが読めるのはこの本での吸血鬼の特性ではなく、エドワード個人の能力です。他にも未来を見る事が出来たり、感情を操ったりという能力が人(吸血鬼)によってあります。
エドワードを吸血鬼にした「父」カーライルと「母」エズミを筆頭に、血の繋がらない家族であるカレン一族を形成しています。
ベラの一人称で進む小説はやはり軽い文体で、和製であればライトノベルに分類されるものでしょうね。
映画二作見て小説読んだけど、主人公カップルにはあまり心惹かれません(三作目以降の映画は見ていません)。
人狼のジェイコブやエドワードの「兄」であるジャスパーの方が私にとっては魅力的でした(でも映画のジャスパーはイマイチだった……)。あと「姉」のアリスが可愛い。
元軍人で大人数の吸血鬼化したばかりの凶暴な「新生者」と戦い、傷だらけで戦闘のプロで、人間を襲わず動物の血を飲むカレン一族の中で人間の血への欲求が他より強いジャスパー。やっぱり主に出るのがエドワード、ベラ、ジェイコブなのですがジャスパー好きです。
そしてジェイコブは髪が長い時の方が好きだ。
たまにはこういう本も面白いかな。

「哀しき新生者」は外伝で、本編では敵の勢力側として少しの登場で死んだ少女の物語。
正直、本編の主役であるベラもエドワードもどうでもいいので私はこちらの方が面白かったです。
外伝の主人公であるブリーと、その仲間のディエゴとフレッドが良い。
生き残っている筈のフレッドの話がちょっと読みたいです。


ヴァンパイア・クロニクルズ/アン・ライス

ヴァンパイア・レスタト 夜明けのヴァンパイア
 ヴァンパイア・レスタト
 呪われし者の女王
 肉体泥棒の罠
 悪魔メムノック
 美青年アルマンの遍歴
 パンドラ、真紅の夢

ゴシック小説の女王アン・ライス。
この方は何といっても「ヴァンパイア・クロニクルズ」です。
トム・クルーズとブラッド・ピットで映画化された「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」、この映画をきっかけに私も読むようになったんですけどね。
映画原作の邦題「夜明けのヴァンパイア」はハヤカワ文庫から、その続きは扶桑社から出ています。

レスタトが好きです。あの性格がいいんですよ。
そして、訳者の方のせいもあるかもしれませんが、文章の美しさに心惹かれます。
文章や、文章の紡ぎ出す映像の美しさですね。読んでいてくらくらする時があります。
あと、「肉体泥棒の罠」でのルイとレスタトのやりとりが何度読んでも笑える。
レスタト「それ以上続けるなら、わたしは泣くぞ」
ルイ「泣けよ。君の泣くところをぜひ見せてもらおうじゃないか。(後略)」
このあたり(上巻210ページ)おかしくて読みながら一人にやける怪しい奴です。

海外に行った際に書店でアルマンが主役らしい外伝を発見したのですが、訳すだけの技量がないので買いませんでした。
その数年後「美青年アルマンの遍歴」として発売されました。
「悪魔メムノック」の続き。と言ってもレスタトはほとんど出てません。
しかし、「The Vampire Lestat」が「ヴァンパイア・レスタト」なのに、なぜ「The Vampire Armand」が「ヴァンパイア・アルマン」ではなく「美青年アルマンの遍歴」なのか。
私は「ヴァンパイア・アルマン」の発売を待っていたのにー。
「美青年アルマンの遍歴」って書くと、何か美女の間を渡り歩いて来た遊び人の人生みたいだな。タイトル間違ってませんか。
そして、アルマンに言わせるとルイってレスタトの「初期の魅力的な失敗作」なのですね……。
そうなの? 失敗作なの(;;)?
ルイと言えば、「彼はレスタトに悪さをする者が誰もいないのを千回確かめ、さらに最後にもう一度確かめると、ようやく向こうに帰っていく」という記述があって、あまりにも彼らしくて笑ってしまった。
ルイ好きなんですよねー、レスタトの次に(^^;)

「パンドラ」の後のヴァンパイア・クロニクルズは邦訳が出版されていません。
この際一作目出した早川書房でも扶桑社でもどっちでもいいから出して下さい……。ローアンシリーズ出した徳間書店でもいいです(切実)。


呪われた天使、ヴィットーリオ/アン・ライス

呪われた天使、ヴィットーリオ 「ヴァンパイア・クロニクルズ」で描かれる吸血鬼とはまた別の歴史と由来を持つ、フィレンツェでルネッサンスなヴァンパイアです。
ヴィットーリオはある夜住んでいた城を襲撃され、両親と弟妹を殺され、それを行った悪魔のような者たちに復讐を誓う。
捕らえられ、彼らの血を飲まされ放り出された彼の眼には天使が見えるようになっており、天使たちの力を借りてヴァンパイアを滅ぼしに向かう。

きみ(注:人間である読者)の代わりに、わたしがその代償を払おう。」という最後の言葉に、彼の罪深さと苦しみが表れていて心に沁みます。


吸血鬼カーミラ/レ・ファニュ

吸血鬼カーミラ 短編集で、表題作他に七編の短編が収録されていますが一番長いのが「吸血鬼カーミラ」です。
主人公が父と二人で住んでいた城に、ある事情からしばらく逗留することになった同年代の美貌の少女、カーミラ。
それから時折近くに住む娘が病で死ぬようになり、彼女達が死ぬ前に幽霊を見たという噂が流れてくる。
カーミラの奇怪な言動と、彼女と瓜二つな女性の古い肖像画の発見。
そして、あたりに蔓延する病が主人公の女性を襲う。
……という話。
百合っぽいので、あまり深く考えずに読み進めるのをお勧めします。
他の短編は吸血鬼ものではありません。

関係ないですが私は最初の頃、作者を女性だと思って読んでいました……。


吸血鬼/赤川次郎

吸血鬼 小説ではなく戯曲です。
実際にどこかで上演されたのかどうかはわかりませんが、「モノクロオム」「吸血鬼」「コードレス・ナイト」の三本を収録。
吸血鬼ものは表題作のみです。
音大生の邦子は恋人に裏切られ美術館で手首を切ったが死ぬ事がなかった。代わりに飾られていた絵の中から<呪われたヴァイオリン>を弾く男がその血で甦り、彼女のヴァイオリンの腕を上達させるが次第に男は彼女の意思をよそに暴走を始める……という話。
戯曲形式で書かれているので、多少読む人を選ぶかもしれません。


ぼくが恋した吸血鬼/赤川次郎

吸血鬼 洋館の地下に運び込まれた棺には、吸血鬼が潜んでいた。

正人の恋人亜紀が吸血鬼に襲われた。
正人は過去にも母親を吸血鬼に襲われ、亡くしている。吸血鬼と戦おうとする彼に力を貸そうとする幼なじみの有子を見て、吸血鬼である伯爵は目を瞠った。
彼女は、かつて人間であるにもかかわらず、自分と共にいたため人間に杭を打たれて殺された妻にそっくりだったのだ。

……という話なのですが、どうしてタイトルが「ぼくが恋した吸血鬼」なのだろう、亜紀は吸血鬼になっていなかったのに。
有子も血を吸われたわけではなく吸血鬼ではないし、吸血鬼だったとしてももちろん正人は有子に恋もしてない。言うまでもなく正人が伯爵に恋したわけでもない(^^;)
「ぼく」が正人じゃなくて伯爵だとしても、死んだ妻も有子も人間なので吸血鬼ではない。
「ぼくが」じゃなくて「ぼくと」だったら正人と、有子に恋した伯爵ってことで意味は通じますが。
摩訶不思議なタイトルの作品です。読みやすくはありますが。


屍鬼/小野不由美

屍鬼 単行本で上下巻、文庫で5巻。
かなりの分量です。
私は単行本で読んだので、しばらく辞書のような本を持ち歩いていました。重かった(^^;)

主人公が作家なので、作中に彼の書いた小説が時折挿入されます。
主人公の内面を表すように作中作も展開。

村はずれの館に越してきた不思議な住人。
死んで葬られた筈の人の姿を見かける。人が死んでいく。

吸血鬼ではなく屍鬼という名称が使われます。
日本を舞台にした読みごたえのある吸血鬼小説です。


吸血鬼ドラキュラ/菊地秀行/ブラム・ストーカー

吸血鬼ドラキュラ ブラム・ストーカーの「吸血鬼ドラキュラ」を菊地秀行が読みやすく書き直したというか、超訳というか(^^;)
ストーリーはブラム・ストーカーのものと同じですが微妙にキャラクターの違う人も(菊地氏が自分でも書いていますが)。
薄くて読みやすいので外国文学苦手な人のドラキュラ入門用にいいかもしれません。


ネフィリム 超吸血幻想譚/小林泰三

ネフィリム 文庫発売時に本屋さんで衝動買い。
この方の本は「玩具修理者」とか気になりつつ読んだ事が無く、初めて読みました。
主人公のヨブは(最強の)吸血鬼なのですが、とある理由からずっと血を吸っていない上に力のある吸血鬼なのでそれほど吸血衝動に悩まされることもなく、読んでいてあまり吸血鬼らしさを感じません。吸血鬼というか万能の究極超人っぽい。
そして吸血鬼を退治しようとしている人間の組織と吸血鬼達、さらに人間も吸血鬼も餌(とも違うか)とする「追跡者ストーカー」のJの異種入り乱れた闘いが始まる……という感じ?
読み始めるとどんどん読めて、面白かったです。
吸血鬼に襲われた人間の吸血鬼化の原因とか科学的に調べようとしてたり、(スプラッタありの)SFアクションっぽい。
が、吸血鬼らしさという点ではちょっとポイント低いです(吸血鬼は山ほど出てきます。ヨブやJの前では雑魚ですが)。
それに最後まで回収されていない謎(本当は子供じゃないらしい、何一つ正体が明かされていない少女とか)が色々あって、読み終わってから「これシリーズものだったのか……!」と思ってちょっと調べたらこの話は文庫書き下ろしではなく単行本で最初に出ていて、単行本でも続編は今のところ出ていない模様。
闘いは終わったと見せかけて、実は主要な登場人物は全員生きているので続くんでしょうね、おそらく。
レビュー見ると随分こき下ろされていますが、続きが出るなら私は悪くないと思います。でもこの一冊が全てだったらちょっと引く(笑)


紅の伝説/団龍彦

紅の伝説 団龍彦、この方は私がかつて非常に好きだった作家さんです。
主にライトノベル(軽いオカルト系)書いてた中で、おそらく唯一の一般小説。
住んでいた村がダムになってしまったため、日本の各地に散らばった吸血鬼達。
村がダムに沈められ、嘆く人々の情景から始まり、最後は久し振りに生まれた吸血鬼の誕生を祝うために各地から集まった彼らの希望の声で終わります。
綺麗ではかなげでとても優しい吸血鬼達「血の民」と、それに出会った人間との一瞬の交流を描いた、全般を静けさが支配する物語です。
後ろの奥付を見たら1989年初版出版でした(現在絶版です)。
発売されてすぐ買ったから、それ以来ずっと私の本棚に置いてあることになります。
ってことは、この頃既に私の吸血鬼好きは始まっていたんですね。


髑髏検校/横溝正史

髑髏検校 まだ日本では完訳が発表されていない時にブラム・ストーカーの「ドラキュラ」を下敷きに横溝正史が書いた表題作「髑髏検校どくろけんぎょう」と、「神変稲妻車」の二編をおさめた本。
徳間文庫と角川文庫で出ているようです。
私が購入したのは角川文庫の創刊60周年記念企画「今月の編集長フェア」で京極編集長版のカバーのものですが、画像は徳間文庫版。
「髑髏検校」は短めで、「ドラキュラ」の世界を江戸に置き替えて語られます。ドラキュラにあたる役割の髑髏検校が、髑髏の旗印をつけた幽霊船で孤島より江戸にやってくる……。
孤島にあった古い墓からは読めなかった検校の意外な正体が最後に明らかにされます。

「神変稲妻車」は吸血鬼は関係のない時代物で、美形双子兄妹とか埋蔵金とか共鳴きする笛とか二百年生きた妖姫とか色々出てきます。面白いですよ。




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