2006.7/2〜8/27  ダンス・オブ・ヴァンパイア

「ダンス・オブ・ヴァンパイア」を観てきました。
この舞台の場合は劇場表記を「帝国劇場」ではなく「帝国劇城」と書くのがステイタスらしい(笑)
これはロマン・ポランスキー監督の映画「吸血鬼」をミュージカル化したものです。
映画はかなり古いんですね。私生まれてませんよ……。
それはともかく。
ストーリーは映画とほぼ同じです。でもミュージカル。
吸血鬼が歌い踊ります。
吸血鬼好きの私はとても楽しみにしていた舞台です。

アブロンシウス教授が市村正親さん、その助手のアルフレートはWキャストで泉見洋平さんと浦井健治さん。
今回アナウンスが長いです。その回のアルフレートがやってます。
開演前と一幕終了後と二幕開始前、そして終演後の4回。
これまでは開演前以外は劇場のお姉さんのアナウンスだったと思いましたが、今回はアルフレートが活躍。
しかも開演前は長いです。吸血鬼にあったらどうやって対応するか、そしてお約束で絶対にやってはいけない事として、録音・撮影、そして携帯の事。
休憩後も再度携帯については注意されます。
「一幕の前に電源を切ったから大丈夫と思っている方、休憩中にメールチェックしませんでしたか? しましたよねえ?」と携帯の電源を確認するよう促してこれから吸血鬼の出現率が高くなるので注意しましょうと面白いです。
泉見さんの「アルフレートでした!」の言い方が楽しくて好き。

さて、舞台ですがルーマニアはトランシルヴァニア、教授と助手のアルフレートの二人がたどり着いた村では皆がニンニクを飾り、食べている。
村の宿に泊まった二人。アルフレートは宿屋のシャガールの娘サラに一目惚れ、しかしサラは伯爵の城から村へロウソクを買いに来るせむし男のクコールが届けた赤いブーツを履いて、城へ行ってしまう(映画では風呂場から伯爵に誘拐されます。舞台では風呂場シーンはあるけど伯爵は誘うだけで連れて行かない)。
クコールは駒田さん。
かなりの特殊メイクです。
手も大きく不格好(?)になっていて、鼻筋から額、頭に掛けてマスクで覆われていかにもな顔を演出。知らない人は原形の顔判らないでしょう。
歌はなく、一応少し喋りますがちゃんとは喋れない役なので辛うじて何て言っているのか判る位。「こんにちは」とか「ロウソク」とか。
でも間違えようも無く駒田さんなんだなー(^^*)
少しの台詞だけで歌もなく、あとは動きのみなのにこう、普通なら出せないような存在感が……。やっぱり駒田さんはすごいです。
映画観て予想していたよりも台詞も出番も多かったので得した気分。
と言ってももっと少ないと覚悟していただけですので客観的に見れば少ない、と思います。
クコールの存在感がもったいない……。クコール劇場(後述:幕間)でそれを補えますが。
それにしても登場する度に各所で魅せてくれます。

伯爵は山口祐一郎さん。
最初の登場は客席通路からで、「神は死んだ」を歌って消えていくミステリアス演出。ここの伯爵好きです。ええ、とても。
が、サラの所に最初に現れて誘惑していく時、コウモリの羽を背負って(実際に背負っているのではないですが)登場した時は笑いました。
羽が背中にあるのにマント付けてる……? と思ったら乗ってたリフトにコウモリの羽がついていて、リフトに羽を残したまま下(浴室内)に降りちゃったよ! というすごい場面が。
伯爵本人は真面目にやっているのですが、でもあれまさか本気でコウモリの羽を伯爵の身体の一部として見せたい訳じゃないですよね……?
コウモリの羽を除けば伯爵はなかなか良いです。羽も何度か見れば慣れましたけどね。
何かに似ている……とふと思ったら、ハンググライダーでした(笑)
ちょっと白っぽいものの混じった髪をマントの後ろに流して、マントの裏地は暗めの赤だったりシルバーグレイ(?)だったり。とても良い感じです。特に最初の登場時の肩周辺に黒い羽根飾りのついたマントとか。
せっかくだからもっとばさばさマントを使ってくれたら尚良かったのに〜。
まあ確かにマントをはためかせてアクティブに動くタイプの吸血鬼ではないけれど。それにいい感じの位置で手に固定しちゃってるしね。
舞踏会でサラを伴って現れるヘルベルトの黒いマントは大層好みでした。
翻るマントは舞踏会のヘルベルトと、一幕でのヴァンパイアダンサー達が見せてくれますが、伯爵のマントが翻るところも見たかったです。
……と、ストーリーの方に話を戻しまして。
城に来た教授とアルフレートを伯爵が迎えます。
そしてにこやかに教授にサインを頼み、その一方アルフレートには老いぼれには頼るな、私が導いてやれると誘惑。
サラには近付いていると教えて海綿スポンジを取り出す伯爵も笑えます。
教授を連れて案内していくクコールを目で追っていた私は取り出す瞬間を見ていなくて、初めてこのシーン見た時「どっから出した!?」と心の中で叫びました(笑)
4回目でやっと確認しました。
山口さん、私は「レ・ミゼラブル」のバルジャンと「エリザベート」のトートと今回のクロロック伯爵しか見た事ないのですがこの伯爵が一番好きかも。
もみあげがもう少し短いとなお良い(^^;)
そして最初の頃はやっていなかったと思うのですが、回を重ねていくうちにクコール伯爵に甘えてる〜!
教授を案内するために燭台をもってやってくるクコール、伯爵の背中に頭をすりすり。かわええ……。
ここにきてますよという意思表示(?)で伯爵の背中に軽く頭突きかましてからすり寄るクコールに仕方のない奴だなという感じの伯爵の「クコーーォル」の呼び方、見ていて非常に楽しいです(そしてクコールを見ていてスポンジを毎回見逃す私)。
ヘルベルトはヘルベルトでアルフレートにお尻を突き出すように90度身体を折り曲げて床に置いたアルフレートの鞄を持ち、退場。
ヘルベルト、パンツの外にガーターベルトを出してます。全体的に黒っぽい衣装なので、黒のガーターベルトしててもあまり目立ちませんが。必要はないので多分飾りでしょう(^^;)
このクロロック城の三人衆が誰をとっても非常にエキセントリックで素敵。
このあたりで一幕が終わります。


一幕と二幕の間の休憩中にもお楽しみが!
このミュージカルは真冬のトランシルヴァニアが舞台ですので、雪が降ったりするわけです。真夏の帝劇でも溶けない雪が(笑)
幕より手前の舞台上の紙吹雪を、休憩中に出てきて箒と塵取り(と時々はたきやうちわ)でせっせとお掃除するクコールさん。
初日はやっていなかったのですが、公演が始まってすぐに始まった模様です。
これがまた見る度に違っていて楽しいのです。
休憩中に掃除してるよと友人にメールで教えられてから最初に見た時は「小さい秋」のヴァイオリン演奏付きでした。
その次は「かあさんの歌」で、時折ウッと嗚咽しつつ箒で掃除をし、最後には手紙を取り出して正座して読み……という小道具付きの一幕。
このクコール劇場は、時々「ダンス・オブ・ヴァンパイア」の公式ブログでも紹介され、時々動画も見られて日替わり全部を観るのは不可能な淋しさを癒してくれます。


クロロック城に招き入れられた教授とアルフレートはあてがわれた部屋で眠り、アルフレートは悪夢を見ます。
ベッドの天蓋からうぞうぞと吸血鬼が降りてきて歌い踊り、サラを伯爵に奪われる悪夢。
それで使うから仕方ないのかもしれませんがベッドの支柱が単なるポールというのは何とかならなかったんだろうか……。
もっとごてごて装飾のどっしりしたベッドを希望。
ベッドもそうですが、全体的にセットはイマイチ感が漂っていたり(^^;)
ゴシック調を意図的に避けたとパンフレットにあったのですが、ゴシック調でなくとももう少しやりようはなかったのかとちょっぴり不満が。
ネズミの国のパレードよろしく電球で飾られた舞踏会場とか、どこら辺が13世紀の城ですかと少々思わないでも無い。

そして悪夢も終わり朝が来るとクコールがワゴンを押してきて登場、モーニングティーの用意をして窓(?)を開け、窓を開けている間に起き出したアルフレートのベッドを整え、サラがお茶を用意してくれたんだろうかと一人で浮かれるアルフレートにショックを受け、自分がやったのにー! という様子で去っていきます。ここはその日によってちょっとクコールの反応が違ったりする。可愛いです。

昼間のうち吸血鬼を退治しようと教授をアルフレートが城の中を探索し、霊廟に二人の棺桶を見つけるものの軟弱アルフレートのせいで杭を打つにはいたらない。
このシーン、「出来ません」というアルフレートを叱る教授の罵詈雑言がナイスです。「しまりがない」って……(笑)。
その後クコールがやって来て蓋の開いた棺桶を丁寧に戻してあげます。いい人だ……。
この伯爵とヘルベルトの棺桶は石棺です。何故か上に髑髏の飾りが載っている。

その後アルフレートはサラを発見しますが舞踏会に出るからと救出を断られて撃沈。その頃教授は書斎で本に夢中。
それからアルフレートはサラが入浴中に歌う声(でも明らかに男の声)を聞いて再びそちらに。が、そこにいたのはヘルベルトで、誘惑された上に襲われ血を吸われそうになり、教授に助けられてまたしても怒られます。
このシーンのヘルベルト最高です。上は透ける黒のフリフリブラウス、下は黒のTバック(+ガーターベルト)で踊り跳ね回ってアルフレートに言い寄ります。面白すぎる……。
しかもめちゃ美脚だ!
おまけに最初の頃はありませんでしたが、太股の付け根にタトゥーが!
矢で射抜かれたハートだったり、蜘蛛だったり薔薇だったり。
吉野さん素晴らしいです。

舞踏会の始まり。
伯爵(マント無し)が現れてそこに集う吸血鬼達に高いところから歌い掛ける。そしてその後ろから赤いドレスのサラを伴って正装のヘルベルトが漆黒のマントを翻し登場。
正装のヘルベルトかっこいい。
ヘルベルトがガーターベルト付けていない唯一のシーン(^^;)
舞台中央で生贄よろしくサラが伯爵の餌食になって血を吸われる。
そこで思わず隅っこで気絶する、変装して潜入しているアルフレート。
もうこの後の吸血鬼親子の表情が大好きだ。血を吸って嬉しそうな伯爵と、それに触発されて手近な女吸血鬼の腕にかぶりつくヘルベルト。
舞踏会に潜入したアルフレートと教授は踊りながらサラに近づき、救出しようとするのですがダンスが始まる前、ヘルベルトはアルフレートに気付いているけれど時々彼を楽しそうに威嚇しつつも放っておいている(泳がせてる)。そして良く見ると女の列に入って男と踊っているヘルベルト、ナイス(笑)
教授とアルフレートがサラを鏡の前まで連れて行き、まだ鏡が彼女を映し出して吸血鬼になっていないことを確認したとき、ふと気付くと鏡に映っているのはこの三人だけであり、とっくに吸血鬼達がそれに気付いていることを知る。
「さあ諸君、ディナーの時間だ」
伯爵の化け物口調が好きだー(なんか「エリザベート」の時も似たような感想を書いた記憶が……)。
ちなみにこの鏡、本物の鏡ではなく、鏡面の向こうに三人と同じ服装の人が映った影を演じています。鏡を見ながら動いていないので、逃げる時微妙に動きが合ってない(^^;)
燭台を十字に組み合わせて吸血鬼達を足止めし、逃げ出した三人を伯爵はクコールに追いかけさせます(クコールは人間)。
が、外に追って出たクコールは狼の群れに襲われてご臨終。
これ、私は映画を見たから解りますが、何度も観る人はともかくこの舞台1回しか観ない人にはちょっと解りにくいかも……? 狼の声を聞かせてはいるけれど、狼を人間が演じているのでシルエットで見えるのは人間なので。

そしてヴァンパイア達から逃げのびたサラとアルフレートですが、逃げる途中でサラが吸血鬼化してしまい、アルフレートを襲って二人共に吸血鬼に。
教授はそれに気付かず正義の勝利だと意気揚々。
皮肉なラストです。
剱持たまきさんのサラ、アルフレートの血を吸った後の恍惚とした表現が素晴らしいです。
サラは大塚さんと剱持さんどちらも違う味があって良いのですが、ここのシーンは断然剱持さんが良い。
剱持さん、コゼットよりもホーデルよりもサラの時が好きです私は。
その後吸血鬼達のダンスからカーテンコールへとなだれ込むのですが、服装も一新。現代風の衣装になって踊ります。
しかしそれでも黒の革パンツの外にガーターベルトと、上着の後ろに黒レースを忘れないヘルベルト(笑)
カーテンコールは市村さんが出てきて十字架を取り出して見せつけ、吸血鬼達がのけぞったり(クコールは人間なので駒田さんは平気)、最後に出てくる山口さんは口を開けて長い牙を見せつけてからお辞儀したりと笑わせてくれます。
しかしクコールはかわいいな。

微妙に不満もありつつ、でもそれを補って余りあるメインキャストの皆さん(アンサンブルやダンサーの方達はどれが誰やらあまり判らない……特にヴァンパイアメイクの時は……)の活躍で非常に楽しい舞台です。

続き(主に千秋楽の話)はこちらから

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