ヴァンパイア・クロニクルズ/アン・ライス
ゴシック小説の女王アン・ライス。
この方は何といっても「ヴァンパイア・クロニクルズ」です。
トム・クルーズとブラッド・ピットで映画化された「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」、この映画をきっかけに私も読むようになったんですけどね。
映画原作の邦題「夜明けのヴァンパイア」はハヤカワ文庫から、その続きは扶桑社から出ています。
映画
ではトム・クルーズ演じるレスタトが主役のような宣伝のされ方していましたが、メインはやっぱりブラッド・ピットが演じたルイですよね。
シリーズとしての主役はレスタトでも、一冊目だけはルイなんだし、客寄せかもしれないけど不当な扱いですよ。
いや、別に私はブラッド・ピットのファンじゃありません。どっちかと言えば嫌いな方かもしれないですね。あの「エラ」が嫌いなんだあっ!
でもしっかりビデオまで買ってしまった(後でDVDも)。
ポスターとサントラも……。
クロウディアのキルスティン・ダンストは綺麗で可愛くて素晴らしかったです。
レスタトが好きです。あの性格がいいんですよ。
そして、訳者の方のせいもあるかもしれませんが、文章の美しさに心惹かれます。
文章や、文章の紡ぎ出す映像の美しさですね。読んでいてくらくらするときがあります。
あと、「肉体泥棒の罠」でのルイとレスタトのやりとりが何度読んでも笑える。
レスタト「それ以上続けるなら、わたしは泣くぞ」
ルイ「泣けよ。君の泣くところをぜひ見せてもらおうじゃないか。(後略)」
このあたり(上巻210ページ)おかしくて読みながら一人にやける怪しい奴です。
カナダに旅行した際に書店でアルマンが主役らしい外伝を発見したのですが、訳すだけの技量がないので買いませんでした。いつか日本で出るのを待っています。
余談ですが、「夜明けのヴァンパイア」は篠原烏童さんが漫画化しています。
これは映画と違って原作通りにアルマンが金髪の少年(というか青年)になっていて、「聖歌隊の少年の顔をした悪魔」とレスタトが表現した彼の姿が拝めます。
(文庫化にあたって「夜明けのヴァンパイア」から「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」に改題)
−追記−
上で書いた「アルマンが主役らしい外伝」は、「美青年アルマンの遍歴」として発売されました。
「悪魔メムノック」の続き。と言ってもレスタトはほとんど出てません。
しかし、「The Vampire Lestat」が「ヴァンパイア・レスタト」なのに、なぜ「The Vampire Armand」が「ヴァンパイア・アルマン」ではなく「美青年アルマンの遍歴」なのか。
私は「ヴァンパイア・アルマン」の発売を待っていたのにー。
「美青年アルマンの遍歴」って書くと、何か美女の間を渡り歩いて来た遊び人の人生みたいだな。タイトル間違ってませんか。
そして、アルマンに言わせるとルイってレスタトの「初期の魅力的な失敗作」なのですね……。
そうなの? 失敗作なの(;;)?
ルイと言えば、「彼はレスタトに悪さをする者が誰もいないのを千回確かめ、さらに最後にもう一度確かめると、ようやく向こうに帰っていく」という記述があって、あまりにも彼らしくて笑ってしまいました。
ルイ好きなんですよねー、レスタトの次に(^^;)
また続編を映画化する時は是非別の俳優さんにやっていただきたい。
ジョニー・デップならオッケーだ。
……と、思ってたら最初レスタトはジョニー・デップの筈(?)だったんですね。
うーん、でも彼はレスタトよりルイのが似合うと思うんだけどなあ。
でも一度それで蹴ってるってことは、彼が出てくれる望みは薄いか……残念。
−更に追記(^^;)−
2002年10月12日、続編(果たしてこれだけ違っていて続編と言えるのかどうか?)の映画が「クイーン・オブ・ザ・ヴァンパイア」として公開されました。
「Queen of the Damned」が「クイーン・オブ・ザ・ヴァンパイア」になってしまうのは今の日本の現状からして仕方ないのかもしれないけど、だったら「呪われし者の女王」にしておきゃいいのに。
レスタトの俳優交代は別にいいんです。私はトム・クルーズのレスタトもスチュアート・タウンゼントのレスタトもそれぞれ愛してます。
スチュアート・タウンゼントのレスタトは、映画見るまではかなり髪の色が気になっていました。あのレスタトの豪華な美しい金髪が……。でも、大丈夫でした。
金髪じゃなくても、瞳の色が違っても、彼は十分レスタトだったのでした。
でもこのジェシーはなんなの? そしてこのマリウス……(涙)
アルマンファンじゃないから、出番の少なかったアルマンにあれこれは言わないが(でもあのアルマンは根性悪そうだよ)、あんなマリウス嫌だああ〜(T-T)
結構意外と彼の評判はよろしいようですが、私は嫌です。却下!
マハレとメカレが一人にまとめられてるのもまあ仕方ないでしょう。
喰われずにアカシャが崩れてあっけなく死んでしまうのも画面的に仕方ない(?)。
でもルイの存在を完全に排除してまでジェシーをヒロインに仕立てあげる必要が一体どこにあるのだろう。
あまつさえ、マハレがジェシーの(ヴァンパイアとしての)親の筈なのに、何故レスタト?
それを言うならレスタトの親が何故マリウス……。
基本設定をここまで壊して作ってるっていうのはもうこれ以上続編の映画を作る気はないとしか思えない(もともとないのか)。
ストーリー等映画の出来は「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」の方がどう見ても上です。
「クイーン……」はこれはこれで好きだけど、スチュアートとアリーヤ(アカシャ役)と音楽に救われてるって感は否めないですね……。
やっぱりこちらもサントラ買ったし(ポスター売ってなかった)。
なんか小説のとこなのに映画について語ってますが、このサイト映画単独のページがないもので、ここに書いてみました(^^;)失礼。
これ以上増えたら単独のアン・ライスページ作らないとだめかも。
彷徨者アズリエル 他/アン・ライス
ヴァンパイア・クロニクルズ以外のアン・ライス作品を紹介してみます。
「彷徨者アズリエル」は、文庫本派の私が珍しく単行本買いました。
というか、ふと気がつけばこの作品、何故か文庫化していませんね。とても面白いのにもったいない。
まあ単行本出た時に文庫を待たずに買ったのは正解だったということで。
「幻のヴァイオリン」もかなり好きです(こちらは単行本と文庫あり)。
「彷徨者アズリエル」と「幻のヴァイオリン」は両方とも出てくるのが吸血鬼などの魔物ではなく幽霊さんみたいなモノなのですが、どちらも続き物シリーズでなく一冊で読めるので、ちょっと読んでみたい人には良いかもしれません。
一冊で読めるヴァンパイア・クロニクルズ以外の吸血鬼ものなら「呪われた天使、ヴィットーリオ」をどうぞ。
アン・ライスの本は他には「ローアンシリーズ」や「ザ・マミー」、「眠り姫」など出ていますが、邦訳が出て全く読んでいないのは今のところ「眠り姫」だけです。
これは普通の主婦が本屋で買えるポルノを、ということで書かれた本らしいんですが、ちょっと手が出ませんでした。
「眠り姫」は本国では別名義で出版されたそうですが。
ローアンシリーズは続きがずっと出ていませんね。「タルトス」(既刊の「ラシャー」の続き)の邦訳は一体いつ出るのだろう。
ヴァンパイア・クロニクルズと登場人物が一部重なっている事ですし、シリーズ全部は邦訳が出ていないまま既に絶版、ということに耐えられるなら、私はこのシリーズも読んで損はないと思います(それを言うならヴァンパイア・クロニクルズも全部出ていないのですが……)。
「トニオ、天使の歌声」はヴェネチアが舞台の、奸計により去勢された少年がカストラートになり、成長後に復讐を始める……話……?
すいません、肌に合わず上巻全部読んだところで挫折しました……。
お耽美でぽるの(?)なんだもん(^^;)
ホ●系の話が苦手な人は読んではいけません。私はヴァンパイア・クロニクルズは平気ですが撃沈。
上下一気に新刊出たので一気に買って、下巻もったいないことをいたしました……。
二重螺旋の悪魔/梅原克文
厚めの上下巻、角川ホラー文庫です。
近未来のお話ですね。
でも、こんな化け物と戦う未来は嫌だけど。
人間のDNAにこんなのが潜んでいたら嫌だ……。
GOO(ジーダブルオー)と名付けた怪物と戦い、果てはそこから現れたEGOD、「神」と戦い……。
一介の技術屋だった主人公がGOOと戦い、兵士となり、殺された恋人をGOOの知識で蘇らせようという秘かな望みもあるために責務との板挟みになったりします。
テンポもいいし、この厚さの本としては非常に読みやすいです。
しかし、これがデビュー作って、この人って一体……って感じです。
凄いですねー。面白い!
これは小説ではありませんが、分類するならその他の棚よりこちらかなと。
怖いです………。
収集した不思議な話・怖い話を百物語のように一冊にまとめて(しかし、百話集めると以前恐ろしいことが起こったそうで、99話で一冊にしてます)、
私は一冊目が一番怖かったように思いますが。でも第八夜もなかなか……。
一冊目(第一夜)読んだ時は、夜はちょっとでも明るいと眠れないので真っ暗にして寝る私が思わず小さく明かりをつけないと寝られなかったのです。
全部が全部怖い話ではないんですけれどね。
日本にはまだまだ不思議なことが残っているらしいです。
第十夜にて完結しました。
ちなみに文庫も出てますが、装丁は文庫じゃない方が気に入ってます。
天狼星/栗本薫
伊集院大介シリーズの中の一冊。
これは「天狼星」「天狼星II」「天狼星III」「ヴァンパイア」「ゾディアック」と続くんですが、ここでは「天狼星」一冊目だけに限定しようと思います。
後の二冊に比べて格段にグロいですね。途中で読めなくなった人もいます。
切り刻んだ死体に、人肉嗜好。血はだらだら流れて沢山人が死ぬ。
そう、でも私はこれを初めて読んだ時に名作だと思ったのでした(^^;)
だって、本当だもん……。
血とグロさに惹かれた訳じゃないと思うが、何でしょうね、狂気、かなあ。
そして、これは作者自ら中島梓名義で舞台化しています。ミュージカル化されました。
これがね、また凄かったんですよ。
私は「天狼星」を観るまで、同じ舞台は二回までしか観たことなかったんです。
しかし、「天狼星」でぷつっと理性の糸が切れて全部で七回観ましたね。あまつさえ、
どうしてもどうしてももう一度観たい! と七回目は大阪まで行って、舞台を観る為に関東脱出をするというのも、この舞台で初めてやったのでした。
あのころは本当に何かにとりつかれたように劇場に通ってました。忘れもしない新宿シアターアプル。
残業途中で切り上げて劇場にダッシュして、息詰めて見てました。
これにも私が好きな駒田はじめさんが殺人鬼・刀根一太郎役で出演していたんですが、これがもう、原作の小説とは全く違っていて、小説の刀根はゴブリン(注:私のイメージ)だったんですが、舞台の刀根はまるで猫………最初のうちは。公演が重なるうちに何となく猫というよりは舞台上でシリウスが言うように狂犬に近くなって来たんですが、最初の頃の猫のような刀根ちゃんが忘れられません。家に連れて帰りたいくらい可愛らしかったんですよ。
小説とはちがう感じになっていて、金髪、もうちょっと白っぽいか、髪も肌も白くてまともに口もきけない。歌う時だけは言葉を発するけれどあとは唸るだけ、という、演技力で勝負といった役所。最後に刀根はシリウスに刺されて撃たれて階段を転がり落ちて死んでしまうんですが、小説の中では刀根は殺されるようにはなっていなくて、まだ生きています。
大介さんとシリウスの対決のシーンの曲を聴くと(ミュージカルアルバムも発売されました)今でもあの時の気分が蘇りますね。心臓を鷲掴みにされるような感じ。あの時、確かに私は「天狼星」に捕えられていた、支配されていた、と思います。
もっとひまひまな職場にいたらきっと毎日劇場に通っていたでしょう。
ああ、何だか小説のことより舞台の事ばかり書いてますね。まあいいや。
しかしあの頃は私も舞台だけ観て満足して帰る、可愛いファンだった……(今は?)。
上から生首がつり下げられてきたり、刀根は血まみれの切断された人間の腕を食べていたり、怪しげな人の行き交う浅草が舞台の妖しい舞台でしたが、刀根の殺人シーンのようなやたらと綺麗で幻想的なところもあり、嫌いな人はとても正視出来ない、反対に好きな人はとことんはまってしまう舞台でした。
もっと感動するもの、もっと楽しい舞台は沢山あったけれど、あれほど爪先から頭までどっぷりとはまらせてくれた舞台は他にありませんでしたよ。
まぼろし新撰組/栗本薫
これも舞台になったというか、正確には舞台を小説化したものです。
栗本薫さんが当時あった劇団後藤組の公演のために「あかぎはるな」名義で脚本を書き、翌年再演されて、さらに再演を重ねて小説化したもの。
話は、現代に新撰組の隊士がタイムスリップしてきて、現代で恋をしたりそれなりに居場所を見つけるのですが、最終的には過去に帰る方法を見つけて帰っていく、というのがものすごく簡単にした筋ですね。
ユキという少女と沖田総司の二人を中心に進みます。
天然(^^;)だけど腕の立つ総司と、彼をかわいがって大事にしている兄貴分の近藤さん、土方さん達新撰組隊士。ユキの仲間達。殺された筈が現代に飛んできて馴染んでしまい、過去に戻って死なないために総司達を殺そうとする芹沢鴨一味(あ、これは舞台の話ですね。小説では芹沢達は幽霊状態であんまり出てきません)。
彼らが錯綜していきます。
やっぱり私にとって舞台とセットでしか考えられない本です。
藤堂平助が名前の漢字を問われて「助平の平に助平の助です」っていう(これは舞台の)台詞が妙に頭に残って忘れられない(^^;;;
小説の方で忘れられない台詞は、土方と別れたくない、帰らないでと泣く佳奈にユキが言った台詞。
「この人たちには色恋より大事な事があるってどうしてわかんないの? 男はね──男は、好きな女よりもっと大事なことがあるんだよ!」
やっぱりそういう男の人が格好いいです。はい。
……いかん、読み返していて泣きが入ったもようです(^^;)
そして気がつけば、これももう10年近く経つのですね、出版されてから。
舞台はもう上演されなくなっていますが小説は残ります。
舞台の代りにこの本が感動を伝え続けてくれる事でしょう。
これはもうあまりにも有名になってしまいました。
「リング」を読んだのはかなり昔です。当時まだ全然知られてませんでした。
これを読んでから夜中のガラスがちょっと恐くなりました。
特にガラスの向こうが暗く手前が明るくて鏡状になってる時(^^;)
映画の「リング」「らせん」見たんですが、つまらなかったですね。
一番最初にテレビドラマでやった「リング」の方が良かったと思います。
(あったんですよ、単発で。映画の後にドラマになったやつじゃないです。)
「らせん」読んで、私にとっては言語道断な中身だったので「ループ」は読んでません。
「リング」でやめときゃ良かったのに………というのが正直な気持。
平たい地球シリーズ/タニス・リー
タニス・リー、この方は私「平たい地球」のファンなんです。
他にも沢山の本が出ていますが、「闇の公子」に始まって「死の王」「惑乱の公子」「熱夢の女王」「妖魔の戯れ」という、このシリーズの頽廃美をこよなく愛しているのです。
ぱらぱら読み返してたんですが、やっぱり好きなんだなあ。
妖魔の王、闇の君アズュラーン(発音が……)がお気に入りです。
あと、アズュラーンの娘アズュリアズと恋に落ちる狂気の君、チャズもわりと好きです。
タニス・リーの多くの本はハヤカワ文庫FTから出てますが、角川ホラー文庫からも「パラディスの秘録」(吸血鬼もの)というのが出ています。もう持ってないけど。
「血のごとく赤く」という幻想童話集、「平たい地球」じゃないのについ買ってしまったのですが、これはSFも混じって童話を彼女らしく改造しています。
うーん、やっぱり魔的なものは美しい方がいいですよねえ。
−追記−
「闇の公子」が復刊しました!
今後他の作品も復刊されていくのを望みます。
銀色の恋人・銀色の愛ふたたび/タニス・リー
くくりはSFラブロマンス、でいいのでしょうか。
「銀色の恋人」は「SFラブロマンス」で「銀色の愛ふたたび」は「SFラブロマンス」かな。
「銀色の恋人」は20年以上前に書かれた話ですが、作者が24年の歳月を経てその続編「銀色の愛ふたたび」を書き、それを機に絶版になっていた「銀色の恋人」も装丁を新たに復刊されました。
「銀色の恋人」は主人公のジェーンが銀色の肌のロボット、シルヴァー(彼を始めとするロボットの肌色はみなそれぞれゴールドやコッパーなどのメタリックな色)に恋をし、既に友人の所有物となっている彼を手に入れる。そして彼女に強大な影響力を及ぼす母の手を飛び出して、母によってカードを止められてしまったのでお金もないままシルヴァーと二人で暮らし始め……という話で、最後には奪われてしまった彼の真実の愛をジェーンと読者に知らせて、おそらく悲恋と言うのであろう終わりを告げます。
「銀色の愛ふたたび」はジェーンが書いたシルヴァーの本を施設でこっそりと読んで本の中のシルヴァーに恋していたローレンが主人公です。
シルヴァーは彼を製作した会社によって(バージョンアップして)甦らせられてヴァーリスとなり、ローレンと出会います。
以前の記憶はあるけれど自分はシルヴァーではないと言うヴァーリスは、シルヴァーよりも自己が確立していて美しいけれど言うなれば王のように傲慢、人間の奴隷としての地位を拒絶して君臨する。
そして施設を出て精神的にも遙かにジェーンより自立しているローレンにも、自覚が無いけれど秘密があり……。
「銀色の恋人」も「銀色の愛ふたたび」も最後に驚きが待っているのですが、衝撃度は「ふたたび」の方が上かと思います(「銀色の恋人」の方のラストは「ふたたび」の解説にもある通り、日本人には割と当たり前に受け入れられる。「ふたたび」もそうなのかもしれませんが、私にとっては「ふたたび」のラストはかなり意外でした)。
どうも「銀色の恋人」が純愛&悲恋と感動要素の強いものなので、そのイメージを期待して続編を読むとがっかりする方が多いみたい(?)ですね。
ロボットは前作より沢山出てきて、変身したりして能力も以前より遙かに高い。
ジェーンは「ふたたび」には少しだけ登場してヴァーリス(≒シルヴァー)との迷惑な「再会」をし、ジェーンの「あの」母親はジェーンよりも出てきます。
ヴァーリスも主人公も自己が確立して互いに主張していて、私にとっては「ふたたび」の方が面白かったです。
でも「銀色の恋人」をバイブルにしたくなるくらい感動して泣いた人は「銀色の愛ふたたび」は読まない方がいいかもしれません、色々な感想を拾い読みする限りでは。
でも穏やかなハッピーエンドなんですよ、「ふたたび」。
ヴァーリスはロボットの「魂の行方」を見たのだと思います。
日輪の翼/中上健次
これは、99年の10月30日にNHKドラマ館で放送された「日輪の翼」を見て結構面白かったので、原作がある事を知って探して手に入れた物です。
熊野から七人の老婆を連れて若い男四人で旅立った話ですが、ドラマでは本木雅弘の演ずるツヨシ一人が老婆五人を連れてました。
盗んだ冷凍トレーラーを改造してその魚臭い中に老婆は布団をしいて仏壇を置いて暮らしていて、伊勢や諏訪を回っては神様に会いに行く、若者たちは女を漁りに行く………みたいな。
読みながら「トルコ(注:国じゃない)って今言わないぞ……」と心の中で突っ込みを入れ、一体いつのだろうと奥付を見ると92年のもの。最初から文庫ってことはないだろうから、最初に出たのが80年代とすると、そっか、そのころはまだトルコなのかな? などと時代の流れを感じてしまったりして。
(もう、私が買った文春文庫版は絶版になっていて、小学館文庫から今は出ているようです。)
道中、死んだり一人出て行ったりで老婆たちは一人減り二人減りで五人になり、若衆も二人離れて行ったりして人数は少なくなり、最終的に東京について皇居を見て老婆たちは全員姿を消してしまうわけです。
ドラマでは、死んだ一人を海に流してしまうんですが、これはまずいんでないかいと思いました。
老婆達が汀で念仏を唱えている中、ツヨシが毛布にくるんだ遺体を腕に抱えて海の中に入って行くんですよ。光(日輪)が差し込んで場面的にはいいけどさ、届けも何もしないでそれって死体遺棄だよ、おい、という感じ。
小説はちゃんと火葬にしてたんで、安心しましたけどね。
話自体は、全体を漂う何とも言えない空気がわりと嫌いじゃないように思います。
倦怠、とも違うんだけど。諦観かなあ、それとも少し違うか。
なんにしろ、結構好きな世界かもしれないです。
人体模型の夜/中島らも
ホラー・オムニバス。
少年が首屋敷と呼ばれる空き家の地下で発見した奇妙な人体模型から聞いた(?)話、という形になっているのですが、身体の各器官をテーマにした怖いお話たちです。
一度借りて読んで、気に入って文庫化した時に買ったもの。
これらの短編の「怖い」の意味はそれぞれで、オカルト系もあれば現実的に怖いものもあります。
私にとっては「怖くない」話も当然入ってはいますが。
一番怖いのは「はなびえ」ですね。
これはなかなか怖いです。
音と匂いの正体が判った時がちょっとね、想像すると気持ち悪いかも。
煮えた死体って………。
いやー、でもこの本は面白いです。
一話が短いので読みやすいですし、一読をお勧めします。
宇宙皇子/藤川桂介
我が青春の一冊(いや、一冊じゃない)。
小説を10冊近くまとめ買いしたシリーズは後にも先にもこれだけです。
私が読み始めたのは中学生の時で、完結したのはわりと最近の話(既に最近じゃないか……、知らないうちにもう絶版になってたし)。
この話、完結まで挫折せずに買って読み通した人はどれくらいいるのでしょうか。
私は全部読みましたが私の周囲の人は全員、30冊くらいの時点までに挫折してしまったんですよね。
「妖夢編」二巻から、いのまたむつみさんが挿絵を描かなくなってしまったことも痛かった……と思います。
これも理由あっての事ですから、仕方ないと言えば仕方なかったのかもしれませんが。
表紙とカラーの口絵は描いてくれてたんですが、中は別の方が描くようになって、私としては「だったら挿絵いらない」という感じ……だって、恥ずかしくて電車やバスの中で開けないんだもん。
完成されてない絵を本で見せられるのは辛いもんです。最後の方にはまあ見られる絵になってきたけど。
だんだんと話が進むにつれて皇子が精神的に老成してしまうので、私は熱かった最初の20冊、「地上編」&「天上編」の辺りが好きなんです。
印象深い言葉は「天上編」3巻、「俺はお前のように、志を持たぬ者は嫌いだ!」。
外伝含め50冊以上に及ぶ話ですし、内容が内容ですから勉強させられる事は沢山あります。
でも、一番ぐさっときたのはこの言葉なんだなー。
人間、志を持って生きねばならんのですよ。へらへらしててはいかんのです。
この作品は「地上編」がアニメ映画化して、「天上編」がアニメビデオ化しました。
映画の方はかなり不満の残る感じ……。その反省を生かして「天上編」のビデオの方は結構良かったんですけど。
そう言えば、カセットブックも持ってたなあ……(今時はその手の物ってCDになっちゃいましたが、当時はカセットテープだったんですよ)。サントラも持ってるし。
いのまたさんの画集も買ったし、まだ持ってるし。
白いお猿さんに囲まれた皇子のポスターを、10年以上経った未だに剥がせない私は馬鹿……。さすがに劇場版のポスターは色が焼けちゃったんで、剥がしましたが。
そしてまだちょっと金剛山に登りたいなーという気持ちは持ってるのです。
旅行、したいな。
そうか、私はまだこんなにこの作品の影を引きずってたのか……。
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The Sky Crawler/None But Air/Down to Heaven/ Flutter into Life/Cradle the Sky/Sky Eclipse |
飛行機乗りの話です。
飛行機乗りというか、戦闘機乗りですね。
戦争を商売としている会社に属し、子供のまま成長しない淡々としたキルドレと呼ばれる戦闘機乗りが登場。
飛んで、撃って、墜とす。
機体と一体化して飛ぶのが心地好い。さあ、踊ろう。
独特の文体と登場人物の独特の価値観に引き込まれます。
森さんの著作の中で、私が読んだ事のある中ではこのシリーズが最も好きです。
全然内容は違うのですが、同じく戦闘機乗りが出るということで、「スカイ・クロラ」は駒田さんの演じた一人芝居「撃墜王ビリー」を重ねて見てしまいます。
読んでいるとこの舞台で歌われた「♪空で踊りましょう」という歌詞が脳裏をよぎるのですね。
舞台を見た時期と「スカイ・クロラ」を読んだ時期が近かったのも原因かもしれません。
まあこれは個人的な全然関係ない話なのですが。
単行本の装丁が非常に美しいのです。
順次新書と文庫も出ていますが、これはやはり単行本がお勧めです。
出版されたのは左から順ですが、時系列的には最初に出た「スカイ・クロラ」が最後です。
そして、補完という訳でもないですが短編集「スカイ・イクリプス」が発表されました。
リフトウォー・サーガ/レイモンド・E・フィースト
昔、図書館で運命の出会いをしたシリーズです。
図書館で面白そうな本を探していた時に目に飛び込んで来たのが外伝の「王国を継ぐ者」の単行本でした。
タイトルと表紙が気に入って借りて、そうしたらこれが本編ではなく外伝で、本編は文庫で出ていることが判ったんですね。
本編を探し回りましたよ。
だって面白かったんだもん。
しかし、ハヤカワ文庫のファンタジーっていうのは揃ってる本屋さんが少ないんですよね。
リフトウォー・サーガ本編は6冊だったのですが、揃えるのに結構かかりました。
「魔術師の帝国」「シルバーソーン」「セサノンの暗黒」それぞれ上下巻、その上下巻毎に違う書店で探し出しました。
異界からやってくる侵略者とか、魔術師とか、妖精とか、ドラゴンとか色々出て来て面白いんですよ。
あ…何か大分話忘れてるかも……。面白かった事と好きだって事は覚えてるけど。
しかし、「王国を継ぐ者」の主役は双子だったのですが、私はほとんどそこでは登場しなかった双子の父親が気にかかって仕方なかった。そうしたらそのお父さん、アルサ殿下は本編ではしっかり活躍してるじゃないですか!
見る眼あるじゃん>自分
最初は図書館で借りて読んだ「王国を継ぐ者」、本編買った後に取り寄せまでして手に入れたのに、後に文庫になってしまった……。
でも単行本の表紙の絵の方が好きだから、いいんですけどね。
それからまた、双子のさらに下の弟が主人公の「国王の海賊」も出ました。
あとは、J・ワーツと共著の「帝国の娘」がシリーズの関係した作品です。
ファンタジー好きな方にはいいと思いますよ。
ちなみに「帝国の娘」の舞台となっているツラニ帝国はイメージのモデルが「日本」らしいです(^^;;
フィーストの別のお話なら「フェアリー・テール」をどうぞ。
こちらも単行本買ったら後で文庫が出てしまいました……。
−追記−
「伝説は永遠に―ファンタジイの殿堂〈1〉」にリフトウォー・サーガの外伝が1本収録されています。かなり後になって出ているのを知りました。
掌編ですが、邦訳されている分だけでも全部読む! という方は是非。
続きもあるようなのですが、出してくれませんねえ、ハヤカワさん。
あいうえお順に並べ替えてみましたが、海外作家だけ姓でなく名で並べてるのはわざとです(^^;)