2008.8.23 ウーマン・イン・ブラック
パルコ劇場へ「ウーマン・イン・ブラック」を観に行ってきました。
これはスーザン・ヒルのゴシック・ホラー「黒衣の女」を舞台化したものです。
ロンドンでは19年のロングラン、日本では92年の初演以来今回で6回目の公演だとか。
舞台でホラーってどうやるんだろうと思っていたのですが、これは良くできてますね。面白かったです。
斎藤晴彦さんと上川隆也さんの(ほぼ)二人芝居(でも黒衣の女はいます)。
斎藤晴彦さん演ずるキップスが若い頃に体験し、今まで人に語る事なく口を閉ざしてきた恐ろしい出来事を身内や友人に話してしまうことで追い払って(日本的に言うと「祓って」?)しまおうと、その実現のために上川さんを雇う。
でもキップスが書いた話は朗読するには長過ぎ、それを人に聞かせるだけの力も彼にはない。そこで上川さんがそれを芝居形式にしてヤング・キップスとして若い頃のキップスを演じ、オールド・キップスは彼が出会った人達の役を演じることにする。
なのでこれはほぼ大部分が劇中劇(本番ではなく稽古段階の)で、舞台セットもシンプルです。
仕事で上司からドラブロウ婦人の葬式に出席し、その後彼女の屋敷から相続関係の書類をより分けて持ってくるように言われたキップスは列車を乗り継ぎ、ドラブロウ婦人の屋敷にやって来る。
その屋敷は潮が満ちれば町からも隔絶されてしまう、霧と沼地に囲まれた場所。
元気いっぱいでやってきた彼はそこで次々と恐ろしい目にあうのだった……。
舞台は大変面白かったです。
92年からやっていたならもっと早く見たかったな。
でも、不愉快な事もありました。
1回携帯が延々鳴ってた。が、それすら些細な事と言いたくなるような出来事。
この舞台ホラーなんですよ。ええ。
女の悲鳴とか、恐ろしげな効果音とか、色々あるんです。
女の悲鳴1回目、なんか後ろからも悲鳴が聞こえてきて、四方から音を響かせる仕掛けかと思ったら、周囲に謝る小さな「すいません」の声が。
客の本当の悲鳴かよ!
そして同じ人のものらしいその客の悲鳴は怖いシーンや女の悲鳴(効果音)全てで大音量でその後も響きわたったのでした。
ええもう「サクラですか?」と聞きたくなるほどの堂々とした悲鳴の上げっぷり。
うわーん、せっかく面白かったのにー!
まあ、ある意味あの悲鳴の効果音は音で客を脅かすあざとさがまったく無いとも言えないんですけどね。
でも面白いからいいや。
舞台でホラーって出来るんだなあと感心しました。
あ、あと屋敷に泊り込んだキップスが寝る時のベッドの作り方の無理矢理加減がちょっと面白かったです。
後は強力な懐中電灯で舞台上から目つぶしくらったのは初めてだなーとか。
揺り椅子が勝手に揺れていたりするのですが、紗幕の向こうで揺り椅子に座って凄い勢いで揺らしていた女がそのままの勢いで走っていく様は面白いような、その非人間的な様子が「来る」というか。
ラストは、ひょっとしたらこれ舞台だしそういうオチもあるのか? とちょっと疑った通りに。可哀相なヤング・キップス……(本名は何だっけ)。
最後に暗転した中でまた女の悲鳴が響きわたるのを客席全体が身構えましたが、そのまま明るくなったので客席が安堵したのが目に見えてわかりました(^^;)
この舞台面白いですよ。怖いもの好きな人にはお勧めです。
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