2000.6.11  オケピ!

青山劇場に行ってきました。
これは、三谷幸喜さんの初めてのミュージカル作品です。
俳優陣も豪華。
オーケストラピット(オケピ)で起こるさまざまな出来事をお芝居にしたものです。
コンダクター(指揮者)が真田広之さんで、彼の語りで様々な事が説明されながら、演奏家も人間ですから個人個人色々な問題があって、「ボーイ・ミーツ・ガール」というミュージカルの下で、様々な事が繰り広げられていきます。
舞台がオーケストラピットで、上にちゃんとさらに舞台があって、足しか見えないのですがそこでお芝居もやってます。
そして、舞台(オーケストラピット)の下に本物のオーケストラピットがあり、舞台上の真田さんのタクトの動きと、わずかに下からのぞく服部さんのタクトの動きが同じなのが面白いです。

ピアノの人(小日向文世)がウサギの具合が悪いと木箱にウサギを入れてオケピに持ってきたり、コンダクターの奥さん(ヴァイオリン/戸田恵子)は別居してトランペット奏者(伊原剛志)と同棲してるかと思いきや、実はもう別れていて、でも家には帰っていない。
パーカッション(山本耕史)は学生で、一日だけの穴埋めで来ているのですが、オケピに夢も希望も待っていると信じてる。
ダイエット中のファゴット(北川潤)はお腹が空いたと何か食べると熟睡(本番中!)してしまう。
ドラムス(菊池均也)は副業にはじめた洗剤の販売で執拗にコンダクターにパンフレットを勧めるし、ヴィオラ(小林隆)はみんな「ヴィオラの彼」と呼んで誰も本名を知らない。
ハープ(松たか子)と婚約宣言をしたギター(川平慈英)は実は彼女はそんなつもりは全然ないのに勝手に早とちりのお馬鹿さん。
実はハープの今の恋人はトランペット、とか色々なことが入り乱れてて面白いです。

トランペットは本来はジャズの人なので、ミュージカルに慣れてない。
彼の歌う「くたばれミュージカル」は笑っちゃいます。
何で歌うんだ、普通に喋れば30分で終わるとか、歩いて行った方が早いのに踊りながら行くなとか、そういう内容の歌詞ですね。
作曲の服部さんのコメントに「歌詞を聞いて『ははぁ』と思う方はきっとミュージカル好き」とパンフにあったのですが、そうかもしれないですね。
「そうそう、そうなんだけどでも楽しいんだからいいじゃん」と思います。
ミュージカル嫌いな人はきっと歌詞に同感でも「じゃあお前も踊って歌うなよ」と思うのではないでしょうか。

松たか子さんの歌う「ハーピストの理想と現実」、ハープの上品なイメージとうらはらなセクシーな振りが良い。
まあ、これはあの長さのスカートでなかったらやばかったでしょう(^^;)

川平さんの「ポジティブ・シンキング・マン」は、元気一杯。
彼女(ハープ)は照れてるだけ、だから彼女は僕のもの、と前向き過ぎるくらい前向きなお馬鹿な彼。
ここぞとばかりに楽器だらけでスペースの狭いオケピで踊ります。
やっぱり踊りが入ると華やかでいいですよね。

歌と言えば!
これだけは絶対外せないのが布施明さんの歌う「リフレイン」と「オーボエ奏者の特別な一日」。
オーボエの彼は神経質で自分のスペースに人が入ってくるのを嫌い、毎日判で押したように同じ時間に帰って同じ時間に寝て、いつもリードを削っているような人。
一幕で「リフレイン」を歌った時もさすがだなあ〜と感嘆してしまったのですが、二幕で歌う「オーボエ奏者の特別な一日」は思わず泣いてしまう代物です。
昔一度結婚して、二十年ぶりに娘から連絡が入って会った、という歌なのですが、別れた妻に顔も仕草もよく似た娘が別れ際に「結婚します」と言って、去っていく。
娘の幸せを願う父親の歌です。
これはもう、感動の嵐。
パンフに「布施さん、紅白で、この曲唄ってくれないかな」という三谷さんのコメントがありましたが、同感です。
それなら紅白見るかも。
(去年は「THE WINDS OF GOD」のカウントダウン公演だったし、一昨年は神戸に向かう新幹線の中だったし……)

ギターがトランペットを殴って(演奏中!)、ギターもハープもトランペットも持ち場を離れてしまった時に大活躍したほとんどの楽器オールマイティーなサックスの白井晃さんもすごい笑っちゃいました。
トランペットの所に走ってトランペットを吹き、ギターの所に走ってはギターを弾き、ハープの所に駆け寄ってハープを弾き……。
そうしてると肝心のサックスがお留守になってしまって昔サックスをやっていたコンダクターがサックスを吹き、ピアノの人がタクトを握る、というはちゃめちゃぶりの後、「君がいて助かったよ」というコンダクターに「後でギャラの交渉を……」という彼が笑えました。

席も真ん中で見やすい良い席だったし、すごく面白かったし、満足満足。
ミュージカルを観た事が無い、という方は一度行ってみては?
初めてでも充分楽しめるお芝居です。
三谷幸喜作品(舞台)は私、95年の「君となら」と96年の「アパッチ砦の攻防」しか観た事がなかったのですが、「オケピ!」とっても面白かったです。
劇場を出た後、しばらく頭の中を「俺達はサルじゃない」の歌がぐるぐる回っていたのでした。

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