2005.5.21・6.4〜26  ラ・マンチャの男

「ラ・マンチャの男」を観てきました。
5月に名古屋の名鉄ホールで1回、6月に帝国劇場で5回観劇。
2002年の公演の時(博多でも東京でも観たのに)レポ書いてないので久し振りですね。
2002年の公演からアルドンサが松たか子さんに変わっています。
駒田さんは今回も床屋です。
今回の公演では色々演出が変わった部分がありました。そのあたりを中心に書いてみようと思います。

まず始まりからして違います。
これまでは舞台中央に指揮者の塩田さんが登場していたのですが、今回は舞台下の出入口からギター弾きの水村さんが現れてギターソロから始まり、オーケストラが重なっていきます。
その合間に牢獄の囚人が少しずつ現れるのですが……。
駒田さんは、一体ナニヲシテラッシャルンデスカ〜!?(動揺・妄想)
それから階段が上から降りてきて牢獄にセルバンテスと召使が入れられてくるのですが、セルバンテスと囚人達(主に牢名主)とのやりとりはかなりすっきり短くなりました。
床屋を演じる囚人(つまり駒田さん)とカラスコ博士を演じる囚人(福井貴一さん)とは折り合いが悪そうですね。囚人達の牢獄での疑似裁判を取り扱いたいと福井さんが言うと「またこいつか!」と駒田さんが言ってます。
この二人がというよりは、福井さん演じる囚人が牢獄で一人浮いていると言った方が近いと思いますが。
今回のカラスコ博士、以前よりちょっと軽薄そうな感じがするのはやっぱり最初のうちブラウスのボタン全開だからでしょうか……(^^;)

色々な部分が細々と削られた中、床屋のシーン〜黄金の兜のシーンはやたら増えていました。
何が驚いたって、床屋登場の音楽が全然違いましたよ。びっくりです。
慣れるまでしばらくかかりました。
歌のメロディは同じなんですが。
そして床屋が被っているひげそり用の洗面器(これ、ひげそり用の「鉢」から「洗面器」に変わったのは2002年からだったでしょうか……)をマンブリーノの黄金の兜と思い込んだキホーテにこちらに渡せと言われて一生懸命自分は床屋で旦那様の勘違いですと説明する所が増えてました。
楽しいです(^^*)
ここで雰囲気を明るくしておこうという床屋の役割はかなり明確になったかもしれません。
「黄金のかぶっ、と?」という喋り方が好きだ〜。
その後その「黄金の兜」を被ったキホーテが騎馬戦よろしくラバ追い達に担ぎ上げられ、手を振りながら一周したり(手を振るラバ追い達と律儀に胸に手を当てて礼をするペドロ……)、皆が厳かに歌う中、一人脇で渋い顔をしてる床屋にも段々それが本当に黄金の兜に見えてきて驚いたりと、随分ここは変わってました。
ああ、でも朗々と響く駒田さんの歌は聴けなくなりましたね……(T-T)
床屋以外の人は歌ってるんですけど。
その後キホーテが一人中庭で祈祷をするのですが、そこもだいぶ短くなったような。
一往復で祈祷終わりですか! っていう(^^;;

そして2002年からペドロを大塚雅夫さんが演じているのですが、パブロを演じていた大塚さんがペドロになってからパブロという役はなくなっていました。
ラバ追いは舞台上で名前がちゃんと呼ばれるのがペドロくらいなので、実はパブロがいなくなってラバ追いが一人減っているのに今回気付きました。遅過ぎですね……。
ドン・キホーテがアルドンサに送った信書を取り上げたペドロが、これまでは「誰か字読める奴いるか」と言ってアンセルモがそれを読みあげていたのですが、今回の変更でペドロが自分で読むように変わってました。
ペドロ(を含む大半のラバ追い)は文盲だった筈なのに……!
でもなんだか今回妙にペドロがいい味出してて良かったです。
アルドンサにちょっと夢中になってる隙に自分の鞭で首締められていたシーンはアルドンサに財布(? お金入れた袋)抜かれる風に変わっていたり、ドン・キホーテ達とラバ追い達との乱闘のシーンでは井戸に嵌まって抜け出そうとすると逃げ回る他のラバ追いに再三踏みつけられてまた沈み込んだりしていてちょっとおまぬけ。
あとはラバ追い達にアルドンサが襲われるシーンの最初の方、中央のテーブルで一人赤い光を浴びながら片膝ついて下のラバ追いとアルドンサを見下ろす姿が印象的でした。
宮野さんのような凶悪な感じではないのですが、好きだなあ。

その他色々な変更。
「見果てぬ夢」が長くなってました。
サンチョの最初の歌い出しが今回最初に聴いた時聞き取れなかったのですが、「おいらの名はサンチョ 旦那様の家来だ」が「おいらの名はサンチョ サンチョ旦那の家来だ」に変わってました。
あとは「豚飼いの旦那」が「豚屋の旦那」になっていたり、宿屋のシーンを始める時にセルバンテスがおかみさんに言う台詞が変わってたり。
ムーア人のところの曲調も変わったようですが、あまり目立たないというか気になりませんでした。
ちょっぴり寂しかったのは神父様の配役を決めるところでへらへらしている囚人がセルバンテスの「神父様になってください」の一言ですっと神妙な神父様に早変わりするのが無くなってしまった事です。それと、石鍋さん随分お痩せになりましたね。
「それは無害な妄想じゃ」がナイスでした(^^)

アルドンサの松たか子さん。
2002年に初めてアルドンサやった時よりもかなり良いと思います。
前回の時はちょっと弱いかなという印象もありましたが(それが余計に後の悲痛な感じを強めてましたけど)迫力を増してました。
最初ラバ追い達に給仕しながらフェルミナを追いやったりしてて、これまで判りにくかった二人の確執が見えてきたり。

ぼろぼろになって戻ってきたアルドンサがキホーテに本当の自分の姿を見ろと言っているところ、舞台上にはアルドンサとドン・キホーテ、そして客席に背を向けて 隅にひっそりと座っているサンチョだけしかいません。
ここのシーンはほとんどアルドンサに視線が釘付けにされるのですが、ふっとサンチョを見るとサンチョは二人の方を見る事もせずまっすぐ舞台奥を向いて座ったまま涙を拭ったりしています。
アルドンサがどんなに自分は想い姫なんかじゃないと主張してもドン・キホーテはそれを理解する事を拒んでいる訳で、彼女の叫びの意味を本当に理解できているのはサンチョだけなんですよね。
改めてそう考えるとアルドンサもドン・キホーテもサンチョもこのシーン、とても悲しい。

「ラ・マンチャの男」はわりと中高年の男性が客席にいます。
ほとんどの観客が女性、という舞台とは大分趣が違いますが、でもこれは特に男性にも観て欲しい舞台だと思います(舞台を観た事が無い人に最初に勧める舞台ではないとも思いますけど……)。
そしてやっぱり「ラ・マンチャの男」が私は大好きだなあと思うのでした。

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