1999.12.11・19・25  スクルージ in 東京

東京公演は11日から25日、場所は池袋の東京芸術劇場中ホール。
うち三回行ってきました。
基本的には新潟公演と同じですから、違う事を書いてみますね。
一昨年よりもスクルージは意地悪さがパワーアップ!
ボブ・クラチット(岸田智史)に給金を渡す時に硬貨を三枚机に載せるのですが、そのうち一枚を手を乗せて隠す。クラチットに「お手の下にもう一枚……」と言われて嫌々手をどけたりしてます。
これは前はなかったと思います。
千秋楽の時はクラチットにそう言われてからスクルージ「見てたか」。
三枚目を無事に受け取ったクラチット「もうございませんね?」なんて言ってて、笑いましたねー。
街中ではスクルージに借金をしている人々とのやりとりで、手袋などを売っている女性からは「寒いな」と言ってただで手袋(千秋楽では毛糸の帽子でした)を貰ったり、パンチ人形を操っている人には「(払えなければ)お前の腎臓は私のものだ」。
この台詞は新潟では聞きませんでした。
多分東京公演の途中から入ったんだと思いますが、世相を反映していて面白いです。
本当に、この話って全然古びてないんですよね。現代に通じるものがあります。

過去のクリスマスの精霊が消える時の仕掛けは何となく判りました。
なんとなくこうなるんだなっていうのは判ってて、でもどうしてああなる(マントの形が崩れない)のか判らない……というのがやっと判って。でも書かない(^^)

駒田さんのジャック・イン・ザ・ボックス、どうしてああいう衣装(ズボン)なのかなーと思っていたんですが、今回衣装デザインのイラストを見ていて、納得。
箱から飛び出るようになってる人形ですから、バネみたいなんですね。
デザインだと両足くっついてて、もっとスプリングっぽいんです。
でも実際それだと動けないし、ちゃんと両足はなれるようにして、下の方に針金入ったみたいなバネのような出来上がりになってます。ふむふむ。
プリングルスのおもちゃ屋さんでスクルージがおもちゃを選んでいる時、ジャック・イン・ザ・ボックスを見たスクルージが「なんか随分世話になった気がするな」と言っていたのが笑えました(毎日は言ってませんでしたが)。

妹尾河童さんの舞台美術も美しいです。
両脇にある、くるりと回転するとスクルージの事務所/チープサイドタウン/スクルージの自宅と変わるセットも面白いし、鏡の中に過去のクリスマスの精霊/ジェニーが映し出される、壁の中にジェイコブ・マーレイが映る、というような不思議現象もきれいに出来てます。
「?」なのは、何でベッドの中から現在のクリスマスの精霊は現れるんだろう、ということですが(^^;)
いいけどさ、そんなこと。

泣きどころ、というか考えどころなんですが、まず過去からいくと、スクルージのイザベルとの別れの後に、スクルージと若き日のスクルージが歌う所があるんですが、何だかここって神妙になってしまうんですよ。
今でもイザベルを愛しているのに、自分が彼女を去らせた現場を見せられるのって傷つきますよね。
過去だから自分自身では引き止める事も出来ない、過去の自分は横から自分が「何か言え」とか「追いかけろ」とか言っても聞こえないし、同じ事を繰り返すだけです。
そして若き日のスクルージはイザベルに返された指輪、今のスクルージはそれをずっと鎖に付けて首に掛けていて、それを手に自分は愚か者だと歌いあげる、ああ、何だか現実って残酷だ。

スクルージが現在・過去・未来の旅から帰ってきて、プレゼントを沢山買ってボブ・クラチットの家に行くところ、これもそうです。泣きどころ。
七面鳥を手土産にやってきて、子供たちにプレゼントを渡し、最後に末の息子、片足が不自由で病気のティムに回転木馬をプレゼントします。
ティムはダブルキャストで、今回その一人が女の子(土田真里恵)だったんですが、男の子(奥村紫龍)の方が上手かったかな……。初日も千秋楽も男の子だったし。
この時にティムに「盗んだんじゃないよね?」と聞かれ、サンタの扮装をしたスクルージが床に膝をついて目線を合わせ「メリークリスマス、ティム」と言うとティムが足をひきずりながら彼の所に歩いて行き、スクルージの首に抱きつくんです。
スクルージも思わず片手で目を覆うんですが、観客も涙、涙、涙。。。。。。
立ち上がってスクルージが「まだわしが誰か判らんようだな」と正体を明かし、ボブ・クラチットの給金を上げる、そして自分が何をしてやれるか話し合おう、まずティムの医者を探すんだ、いいな、ボブ、とスクルージが初めてボブ・クラチットのことを「クラチット」ではなく「ボブ」と呼ぶんです。
言い方が優しいんですよ。
舞台上でもここが初めてですけど、きっと過去8年勤めた中でも初めてだったんじゃないかな。
名前を呼ぶのって心を許している感じがありますもんね。
それを聞いてボブ・クラチットは「あなたを信じます、全てを信じます」と。
ここも好きなシーン。

トム・ジェンキンズがサンタの衣装を着たスクルージに、ほっぺたにちゅっとされてひっくり返ってたシーンですが、どうやら千秋楽だからじゃなくて今回入った演出みたいですね、いつもあったから。
何だか、前の時よりも最初の時のスクルージと最後の時のスクルージの善悪の差が激しくなった気がします。前より意地悪になって、前よりいい人になって、その分面白くなったんじゃないでしょうか。
ずっと繰り返し上演していって欲しい舞台ですね。
色々と教訓的なことが詰まったお芝居です。
そうですね、その中の一つを書いて終わりにしましょう。

     「人間、何かを始めるのに遅過ぎるという事はない」

       ……あれっ、「やり直すのに」、の方が近いかな。

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